【蘇生のABC】

あなたの正しい処置が、家族や友人の命を左右するのです

 溺水・感電・脳卒中・心筋梗塞・交通事故など、原因が何であれ意識がなくなり、呼吸も心臓も止まってしまったような場合、オロオロしているばかりではあなたの大切な人は確実に帰らぬ人となってしまいます。
そんなとき、是非あなたにしていただきたい救命のための方法が『
蘇生法のABC 』です。事故の、あるいは、突然の病気の現場にいあわせる一般の方々にぜひ覚えていただき、まさかの時に役立て一人でも多くの人の命を救うことにつながればと願うものです。

A.気道の確保

息をする道をつけてやること

 口や鼻と、ここから肺へと空気の通る気管、胃へと食べ物や水の通る食道の四つの管は下アゴの奥でつながっています。原因を問わず意識がなくなると、この四つの管の合流部のすぐ前にある舌を動かす筋肉である「舌根」が合流部をふさいでしまい、息ができなくなります。これを『舌根沈下』といいます。この舌根沈下を取り除き、空気が口や鼻から肺に入る道を通じてやることが気道の確保です。気道の確保は頤部挙上法がより望ましい方法として推奨されています。

<頤部挙上法>

患者が乳幼児のときは、人さし指1本だけであごをもち上げる。


B.口うつし人工呼吸法

しっかり息をさせましょう

 Aで確実に気道を確保しても、いったん止まった呼吸がすぐに始まるとはかぎりません。ゆっくり10数えて呼吸が始まらなければ、すぐに口うつしの人工呼吸をしてあげて下さい。
 呼吸が始まったことがどうして分かるか?簡単なことです。一度30秒ほど息を止めてみてください。止めた後の最初の呼吸は必ず大きな深呼吸をするでしょう?呼吸が始まれば大きく胸が膨らみますから必ずそれと分かります。10秒待っても胸が膨らまなかったらすぐに口うつし人工呼吸を始めてください。

<頤部挙上法>

 しっかり相手の口をくわえ、ちょうど自分の口で相手の口を包み込むようにして強く吹き込みます。どれくらい吹き込むかですか?相手の胸が膨らむまで吹き込みます。


C.心臓マッサージ

Cは血液の循環です。止まった心臓を外から押して動かします。

 気道を確保し口うつし人工呼吸を始めました。ところで心臓は動いているでしょうか?心臓が止まり、血液が流れなくなると、私たちの脳は4分くらいでダメになってしまいます。
 皆さんの首のところに(図F)のように指を当ててみて下さい。規則正しい脈が触れるでしょう?相手の人の同じ場所に指を当て、もし脈が触れなければ直ちに心臓マッサージを始めて下さい。方法は次のとおりです。

図F頸動脈の触知法

(1)相手を固い床に寝かせる。
(2)相手の横に位置し、胸の中心にある骨のうえに両手を重ねておく。(図G)
(3)上半身の体重をかけ、真直下に向かい、相手の胸が3.5〜5cmへこむくらい強く圧迫する。これを一分間に80〜100回くらいの速度で行ないます。
(4)10歳以下の子供達に対しては、手の位置は両方の乳首を結ぶ線から指一本分だけ下を(図H)、片手の指を1本か2本使って、2.5〜3.5cm位下がるまで、毎分100〜120回の速度で押します。

図G

(A)患者の下半身側にある救助者の手の示指と中指を肋骨縁に沿って中央に移動させていく
(B)示指が剣状突起と肋骨縁で形成される切痕に達したら、そのまま中指が切痕に達するまで指を移動させていく
(C)示指のおかれた胸骨のすぐ上の部分が正しい圧迫部位である

図H 正しい圧迫部位の探し方(乳幼児)

 左右の乳頭を結ぶ線と胸骨が交差する部位より指幅一本分下が圧迫部位である。

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