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医師会長という大役を引き受けてから、二年が経とうとしている。新しい年を迎え、昨年の大震災で被災された方々のことを思う。今、どのような生活を送っておられるのだろうか。お年寄りは冬の寒さに耐えられるのだろうか。心が折れそうになりながらも立ち上がろうとする人々への、体だけではない、心のケアも必要な時期にきているのではないか。県医としても、自身としても支援体制は整えておきたい。
◆想像以上の厳しい現状
この二年間、医療の原点とは何か、と考え続けてきた。平成22年4月の会報に「地域に根ざした医療体制」の題で一文を書いたが、伝えたかったのは、「医療の原点」ということだった。中にこんな箇所がある。「医師会は何ができるのか、原点に返って大本・大元・太初のところから、県民と共に、県民の目線で考えていきたい。そのためには、私ども医療側が地域住民と対話しながら、情報公開を進めるべきだろうと考える。そんな対話の中から信頼も育まれていくはずだ。」
県内各地の医師会、行政、住民の方々との現地懇談会は、私にとっては医療の原点を求める大切な機会であると言っていい。現在9ヶ所(10郡市医師会)で実施しており、これから折り返しというところだが、医療最前線の想像以上に厳しい現実を知り、地域の方々の医療への期待と不安を知れば知るほど、地域医療の再生に全力を挙げて取り組まなければとの思いを新たにする。
夜開かれる懇談会を終えて帰るバスの中で、その日に出された意見や要望をもう一度、思い返してみる。現実があまりにも深刻で「これから先どうなるのだろうか」「何をすればいいのか」と思い悩むこともあるが、「お医者さんと身近に話せて、本当によかった」という、住民の方の声や、「知らないことがいっぱいありました。またやってください」という地元病院の職員の方の話などを聞くと力が沸いてくる。
現地を見て、知ることこそが、医療の原点であり、地域に根ざした医療の出発点という思いを持ち続けたい。
◆医師会の理念
12月の臨時代議員会で承認を受けた公益社団法人への移行もまた、「医師会の原点とは何か」と我々に問いかけているように感じた。
定款を読み返してみると、冒頭に「本会は医道の高揚、医学及び医術の発展普及、並びに公衆衛生の向上を図り、もって社会福祉を増進すること」を揚げてある。ここに医師会の理念を見ることができるが、現実の医師会は真に医道の向上をめざしているのだろうか。医術の発展にまい進しているのだろうか。社会に何を提供しているのだろうか。公益社団法人への移行を機に、私を含め会員の1人1人が原点に立ち返り、自身を“検証”してみる必要があるのではないだろうか。
医師会には3つの理念がある、と私は思う。ひとつは社会的責任を果たすこと、2つ目は会員の自己実現の支援、そして3つ目は、毎年の事業計画を刷新し、組織を進化させていくことだ。県民に信頼され、患者さんに寄り添う医師の集団が医師会であると信じている。これからも山を登り続ける気構えで、組織を改革して、前進していきたい。
◆医師会もベンチマーク必要
医師会事務局のあり方も検討しなければならない時期にきている。今のままの組織でいいのか、果たすべき役割は何か、会員のために何ができているのか、をそれこそ原点に立って検証し、職員ともども改革に取り組むつもりだ。
例えば、就業規則だが、昭和52年に制定したあと、抜本的な見直しをしていない。残さなければならない規則もあれば、時代に合わないものもあるはずだ。最近ベンチマークという言葉が盛んに使われる。自分の組織を他の優秀な組織と比較して評価を下し、改革することなのだが、医師会にもこのベンチマークが必要なのではないか。「医師会の常識は社会の非常識」と言われないようにしなければならない。これからは人事交流も積極的にやりたい。職員と話し合いながら、医師会にふさわしい組織、事務局に改革していくつもりだ。
◆経営統合視野に入れながら
「医療の原点への回帰」ということでいえば、今、県内に12ある医師会病院の将来に向けての連携、強化も地域医療の観点から見て、重要な課題だ。
鹿児島県の医師会病院の数は全国で最も多く、地域の中核を担う医療機関として診療内容の充実や、医師確保などに取り組んでおられる。だが、これからは人口の減少による医療費の減が予想され、また、すでに30年以上経過した病院もあって、建て直しを検討する時期にもきている。加えて、医師不足に見舞われている病院も出てきており、5年後、10年後のあり様を考えた時、病院同士の連携がどうしても必要になってくる。連携の方法は様々あるが、最終的には経営統合まで進めば、と私は考えている。
医師会病院はいうまでもなく、地域の医療を支える中核であり、地域内の会員の病院などと連携しながらその責務を果たしているのではないか。現地懇談会の場でも、医師会病院を充実して、地域のハブ病院化を図り、地域完結型の医療体制をつくるべき、との要望が数多く出された。連携強化は会員の心の支え、組織の団結にもつながっていく。そして何よりも地域の方々に安心を与え、信頼を得ることにつながると確信している。マイナス思考ではなく、プラス思考で前進していきたいと思う。
今年の医療界には、診療報酬・介護報酬の同時改定という大きな課題が待ち構えているほか、受診時定額負担の導入や、TPP参加問題など国民皆保険制度を崩しかねない状況も生まれようとしている。もちろん「反対」を掲げて闘っていく。だが、同時に地域医療の再生に向けても新たな一歩を踏み出す年になればと思う。
辰年。昇り龍が夢にでもいいから、現れてくれないだろうか。
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