時言時論 「社会保障改革元年の事業計画」 会長 池田 琢哉

 2014年は診療報酬の改定で幕を開けたが、ことしは地域医療に大きな転換が訪れる年であることをしっかりと受け止めておきたい。100兆円を超す社会保障費の膨張は、国民皆保険制度の存続に赤信号を点し始めている。
そこで、医療費抑制策が導入され、あわせて超高齢化社会に対応した構造改革が求められてくる。我々医師会の事業もおのずと国の政策を受けたものになり、事業計画に反映される。

池田 琢哉26年度は地域医療の再生を中心に据えながら、最重点事業として5つの事業を掲げた。
5事業とは、

1、医師・看護師(助産師を含む)不足対策、
2、県医師会「地域医療構想」策定協議会(仮称)の設置
3、「かごしま救急医療遠隔画像診断センター事業」の推進
4、「在宅医療提供体制推進事業」の推進
5、「鹿児島県医師会認定かかりつけ医制度」

の創設で、その内容に触れ、これから何をしなければならないのか、に言及してみたい。

変容する医療政策

 事業計画の基本方針で、私は26年度を社会保障改革元年と位置づけた。それは、これから始まる改革が、日本の医療の在り方を大きく変え、医療政策が「病院完結型」から、住み慣れた地域全体で病を治し、生活を支える「地域完結型」へと変容していくからだ。そして、医療資源提供体制の構造改革が本格的に始まることとなる。

 具体的には、超高齢化社会にふさわしい医療を提供するための「病床の機能分化と連携」を進め、そのための手段として、ことしの10月から「病床機能報告制度」が始まる。自病院の機能見直しは、これまで地域医療を担ってこられた会員医療機関にとって厳しい選択となるかもしれない。
既に成立した「地域医療・介護推進法」が病床の機能分化を推進する根拠となっており、その先に都道府県が地域のニーズに合わせて構築する「地域医療ビジョン」の策定がある。 そのなかで、注目すべきは、ビジョン策定の権限が県にあるということだ。各医療機関から病床の報告を受けた県は、各病院の役割を決め、地域ごとに調整する。

 例えば、地域における急性期病床が供給過多と判断されると、救急体制や診療実績を見て、劣っていれば、機能の変更を迫られる可能性もある、と言われている。
しかしながら、これらの制度改革があまりに短期間に実施されるとなると、医療難民を生み出すことになりかねず、その結果、地域医療の混乱を招くことが懸念される。また、地域医療ビジョンの検討会が今後、都道府県レベルで行われることになるが、その際は、医師会の意見、とりわけ現場の意見を十分に述べられる環境づくりが是非とも必要である。

独自の医地域医療ビジョンを

 そこで、我々は事業計画の最重要事業の一つに「地域医療構想」策定協議会(仮称)の設置を入れた。高齢化社会に対応するための医療の在り方を地域医療再生の視点でとらえ、会員の英知を結集して独自の「地域医療ビジョン」を構築する。そのために、「病床機能報告制度」と「地域医療ビジョン」を検討するワーキンググループを設置する。「病床機能報告制度」に関する検討会は26年度から、「地域医療ビジョン」在り方委員会は27年度から始動することにしている。この検討会で鹿児島に相応しい「構想」を創り、これを持って県との協議に臨みたいと考えている。

 事業では、このほか、医師不足対策に加えて、新たに看護師(助産師を含む)不足対策にも本格的に取り組む。地域によっては、看護師不足は医師不足以上に深刻で、しかも県外への流出が止まらない状況にある。そこで、会独自の地域医療再生基金を新たに創設して、看護師(助産師を含む)確保へ支援も強化したい。また、医師会立看護学校の看護師養成も積極的に支援していく。

安心して暮らせる医療対策を

 事業計画の中には、前記以外に、「かごしま救急医療遠隔画像診断センター事業」と「在宅医療提供体制推進事業」の推進、さらに「鹿児島県医師会認定かかりつけ医制度」の創設を最重点事業として掲げた。いずれもこれからの地域医療改革に欠くことのできない事業で、全力を挙げて取り組んでいく。

 このほか、数多くの事業を実施することにしており、公益法人としての理念を忘れず、目的を達成したい。  住み慣れた地域で県民が安心して暮らせるために、我々はこれからも安定した医療・介護の提供体制を構築しなければならない。それには国民皆保険制度を守ることが、重要課題だが、国はこのところ、皆保険制度について「必要なときに、必要な医療を受けられる」制度と言い始めている。これは「医療費抑制」を意図した表現の変更にほかならない。我々は「いつでも、どこでも、だれでも」を理念とする現在の国民皆保険制度を、会員の心を一つにして守り抜く気構えを持ちたい。そして、地域医療の最前線で奮闘している「かかりつけ医」の重要性を県民とともに再認識することも忘れてはならない。

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